件名: 「本当にまずい」と思った時には・・・

 

今年もいろいろな方から年賀状をいただきました。

その1枚を見て、私は昔の苦い経験を思い出しました。

以下に紹介する「ある会社」で一緒に仕事をした人からのものだったのです。

 

今から3年前、ひとつの会社が倒産しました。

創業40年を越える上場会社で、その卓越した技術力から、一時は「化学品業界のソニー」と言われた会社です。

しかしながら、事業環境の変化に伴い本業は成熟化の一途をたどり、また、それを挽回しようとして始めた新規事業も失敗。

業績は低迷し、結局、倒産という末路に至りました。

私は、その会社が倒産する6ヶ月くらい前にコンサルティングの依頼を受けました。

それは「なんとか再建して欲しい」という、取引先からの要望でした。

コンサルタントとして、その会社に入ってみて驚いたことが2つ。

ひとつは、「なぜ、ここまで放置したのか」という経営陣に対する驚き。

人間で言えば、ガンが、あちらこちらに転移していて、手の施しようがない状況です。

そして、もうひとつが、社員の人たちの危機意識の欠如。

業績が低迷し、何年間も赤字続きなのに、出てくる言葉は「景気が悪い。製品が悪い。経営者が悪い。」といったことばかり。

「××が悪いのだから仕方がないじゃないか。自分達はそれなりに頑張っている。会社をなんとかするのは『経営者の仕事』」という「甘えの意識」が蔓延していました。

 

病巣は1日1日広がってゆきます。

そして、3ヶ月が経ち、やがて給料も遅延となりました。

社員の人たちは、その時初めて、本当に「まずい」と気づいたようです。

「伊藤さん。このままでは、うちの会社は倒産してしまうのではないですか?」

「…… そうですね。 厳しいかもしれないですね…」

「それは困りますよ。私だって生活があるし…。一体私は何をしたら良いのですか。これまで正直言って甘えていましたけれど、これからは何でもしますよ。」

「…………」

 

「今の言葉を3年前に聞いていたら…」

私は心の中で、むなしさがこみ上げてきました。

人間、「本当にまずい」と思ってから、「何とかしよう」と思っても、もう遅いのです。

身体だって同じでしょ。

「ちょっと変だな」と思った時に、しっかり検査をして、治療しておかないと、手遅れになってしまうのです。

今の世の中は非常に厳しいです。

過激な言い方ですが、もしかしたら、上述の会社の3年前が当社の「今」かも知れませんよ。

今だったら間に合うけれど、このまま放置したらどうなるか?

これまで、このFYFでも、何度も「正念場」ということを書いてきました。

皆さんは、そういう意識を本当に持っているでしょうか?