件名:失敗の痛みを感じる(その1)

 

某商社に入社して1年目の冬のことです。

当時私が担当していた機械のイギリス代理店から3名の人が来日することになりました。

「伊藤くん。今度、サットン(注:代理店の名前)が来たら、君ひとりで接待してくれ。自分は、ちょうど別の仕事が入ってしまったから・・・」と課長。

「部長はどうなんですか?」と私。

「部長も自分と一緒だから。まあ、楽しませてあげてくれ。あまり高くないところで・・・」

接待なんか慣れてないし、それも相手が外国人なんてとんでもない!と思いながらも渋々承諾。

先輩達に「外国人接待の心得」を必死に聞いてまわりました。

 

当日、勉強の甲斐あって、なんとか「食事会」は無事終了。

ホットしていると、先方より思いがけない言葉。

「もう1件行こう。自分達が良いところを知っているから。」  ←本当は英語。

連れて行かれたのは、新宿のカラオケ居酒屋。

その店は前日、彼らが日本に到着して、街に繰り出した時に見つけたとのこと。

それから夜中まで、「飲めや歌えや」の大騒ぎ。

「ウィスキーを水で割ってのむのは邪道だ!」なんて、さすがにイギリス人はプライドが高い。

「ここは日本なんだからいいじゃない。」と思いながらも、お付き合いしてストレートでグビグビ。

酔っ払ってくると、イッキをするのはどうやら万国共通らしい。

一体何杯飲んだことか・・・。

ホテルまで送った後の記憶がプッツリ消えてしまいました。

 

翌朝、ベッドの中で意識を取り戻すと、いつもと比べて妙に外が明るいし、普段耳にしない近所

小学校の校内放送が聞こえてくるではありませんか。

「ヤバイ遅刻だー」。

その日、私は朝9:00から、部長、課長交えてのイギリス代理店との大事な大事な営業会議。

それなのに、時計は、とっくに9:00をまわっている。

自宅から会社まで1時間半の通勤時間。

「病気になって、入院してしまおうか」とか、「電車が止まったことにしよう」とか、いろいろ考えても

それもできず・・・

結局、覚悟を決めて会社に電話を入れました。

 

しばらくして課長が電話口に・・・

「あのー、伊藤ですけれど・・・」

「何やっているんだ! とにかくすぐ来い!」理由も聞かず、いきなりガチャン。

「・・・・・・・・・・・」

 

会社に着いたのは、11:00過ぎ。

「おはようございます。」と力なく挨拶しながら部屋に入ると、それまでザワザワしていた部屋が

シーンと静まりかえる。

どうやら皆、状況が分っているようで、何とも言えない重苦しい雰囲気。

もう会議は終わってしまったらしく、課長は席についている・・・。

イギリス人の姿もない・・・。

 

 

果たして伊藤の運命や如何に。

つづきは、また明日。