カシオ電子工業(カシオ計算機の子会社)は、初めて女性の営業部隊を結成し、法人向けのカラーレーザープリンター市場で攻勢をかける。
新規顧客としてスーパーや百貨店等にも照準を当て、女性の関心を引くチラシやポップ印刷等を提案し、潜在需要を発掘する。
<1997.6.18 日経産業新聞>
<ポイント>
アサヒビールが、かつてスーパードライの販促で、酒販店をまわり鮮度をチェックする女性部隊を編成して成功しましたが、今後は、事例のような直接営業部隊も増加すると思われます。
特に、女性を顧客に持つ企業にとっては、「女性の視点」からのアドバイスは非常に重要であり、提案型営業を進める上で武器になります。
富士重工は主力のレガシイやインプレッサに、エアロパーツ等を装備した中古車を「ゼクター」という新しいブランドで販売する。
車体も再塗料し、通常の中古車と比べて個性を打ち出し、付加価値を高める。
<1997.5.7 日経産業新聞>
輸入車の保有台数が高まる中、トヨタは自社で輸入中古車販売の専門店を展開する。
従来は、顧客から下取りをした後、専門店に卸していたが、直接販売を行うことにより、利ざやを確保し、下取り価格の引き上げを狙う。
<1997.5.9 日本経済新聞>
IBMは家電量販店のノジマを提携して、パソコンの中古販売を展開する。
ノジマが顧客から持ち込まれた製品を店頭で査定・買い取った後、IBMが協力工場でMPU等を交換し、また、ノジマで販売する。
<1997.6.12 日経流通新聞>
<ポイント>
いずれの事例も、「中古」がキーワードです。
成熟した市場の中での売上を拡大するためには、「お客様を囲い込み」さらに「買換需要を促進する」ことが重要ですが、その際、必要な視点は、いかに「お客様が容易に買換できる環境をつくるか」です。
昔から、三井不動産の「三井のリハウス」等、住宅産業で見られた戦略ですが、今後、社会全体が成熟するにつれて、こうした「ゆりかごから墓場まで」のトータルサービスは、多くの業界でみられることになるでしょう。
日本ヒューレット・パッカードはパソコンや英語、技術研修、さらには新入社員のオリエンテーションまで含めた全ての社内教育を有料化した。「自腹を切ってでも学ぶ」という自主性を引き出し、必死の受講によって学習効果を上げることを狙いとしている。
人材開発部長によれば、有料化によって受講生は逆に増加傾向にあるとの事。
<1997.7.23 日経産業新聞>
<ポイント>
「いくら良い教育プログラムを考えても、受講生の意識が受身だから、なかなか効果が上がらない。」人材開発の担当者が抱える共通した悩みです。
こうした問題から、最近では、受講生を公募する企業も増えてきましたが、今回の日本HPの取組みは、更に一歩進んだ取組みです。
考えてみれば、「本当に何か学びたい」と思ったら自腹を切るのは当然のことで、会社が全て用意すること自体、過保護なのかも知れません。
また、周りの同僚を見て、「奴がそこまでやっているのだったら、自分もやらなければ」という刺激にもなるでしょう。
こうした取組みについては賛否両論あると思いますが、私としては賛成です。
最近、会議室の利用に際して使用料を徴収する企業が増加している。
ニチメンは1993年から業務改革の一環として一時間当たり1,000円〜2,000円を徴収するようにしたところ、非効率的な会議室の利用が減り、会議室の稼動率が8〜9割から、4割程度に急降下した。
こうした取組みは、オムロンやJTB等でもおこなわれているが、日本HPでは、更に効果を高めるために、予約料や早朝割引、深夜割増まで設定している。
<1997.8.18 日経産業新聞>
<ポイント>
本記事も「教育有料化」同様、従来無料だったものを有料にすることにより、社員の意識を変える取組みです。
全社的な業務改善テーマを抽出すると、必ず挙がってくるのが「会議の合理化」ですが、確かに出席者の人件費や、営業活動ができない機会損失等、会議をすることによって発生するコストは、非常に大きなものです。
会議室の椅子を無くしたり、制限時間を設けたり、各社いろいろな取組みを行っていますが、こうした、会議室の「有料化」も、特に独立採算が徹底している企業では、なかなかいいアイデアだと思います。
リクルートはA4サイズの雑誌にCDを1枚付けた雑誌「ザッピイ」を創刊したCDの中には最新のヒット曲60曲が15秒ずつ収録されており、読者は各曲のサビの部分を聴くことにより、買うかどうかを判断できる。
<1997.6.26 日経流通新聞>
角川書店は活字と音を組み合わせた新ジャンルの市場創造を目的として、CD付のミニ文庫を発刊する。内容としては、ラジオの人気トーク番組を20話分、活字として収録するとともに番組のテーマ曲とカラオケをCDを添付する。
<1997.7.2 日経産業新聞>
<ポイント>
いずれもCDを添付した書物の創刊記事です。こうした、複数のメディアをミックスした物は以前からもありましたが、最近、特に増加しているように思われます。
確かに、音楽等は「百読は一聴に如かず」であり、リクルートの狙いは的を得ており、今後もこうしたタイプの雑誌は増加すると思われます。
但し、角川のようなタイプは、メディアをミックスする必然性が本当にあるのかどうか疑問です。
ハウスオブレーゼのシャンプー「メインアンドテイル」は、元々サラブレッドの毛並みの手入れ用に米国で使われていた商品だが、「馬を洗っていたら手がしっとりした」という声
から、人間用に転用され、これまで日本国内で約50万本の販売ている。
<1997.7.2 日本経済新聞>
<ポイント>
自社製品が、当初全く考えていなかった顧客層に使われたり、使われ方をしたりという「誤算」はよく聞く話ですが、重要なことは、こうした「誤算」をチャンスとして確実にものにできるか、ということです。
コンサルティングの中で、営業マンに対して「販売した製品が誰に、どのように使われているか?」という質問をすると、首をかしげる営業マンがかなりいます。
自らの顧客に対してきちんと「観察」できていなければ、「誤解」をチャンスにすることなど、望むべくもありません。
オリックス生命は、保険料を従来商品から約3割引き下げた通信販売商品(オリックス ダイレクト保険)を9月から販売する。
ダイレクトメールや新聞広告等を通じて募集し、電話で契約を受ける。
商品はいずれも無配当保険で、特約もなく、加入時の診察を不要にする等、非常に簡便。
同社では、簡易保険の市場を狙った戦略商品として位置づけている。
<1997.8.29 日本経済新聞>
アメリカンホームが年齢・地域で料金格差をつけた自動車保険を販売開始
アメリカンホーム(米系損保会社)は、年齢や運転歴等で保険料に差をつけた新型自動車保険の販売を開始する。
当初は年齢、運転歴、車の使用目的、車種、安全装備の有無等5〜6項目の条件で保険料を決め、段階的に性別、地域別の保険料も導入する。
例えば、事故歴が無く、ファミリーカーを行楽目的で運転する30〜40代の保険料他社より2割以上安価になる。
<1997.8.31 日本経済新聞>
明治生命と安田生命の損保子会社は、10月から懸賞付きの自動車保険を発売する。
明治損保は契約1件について、その場でスピードくじによる抽選を行い、当選の場合は5千円〜1万円相当のガソリンカードを贈呈する。
また、安田損保は抽選で10万円相当の旅行が当たるキャンペーンを実施する。
いずれも、契約更新時の契約者の引き留めと、新規契約の獲得が狙い。
<1997.9.26 日本経済新聞>
<ポイント>
3つの記事ともに、保険業界の最近の動向について書かれたものです。
保険業界は、従来、規制に守られた典型的な横並び業界でしたが、最近では規制緩和により、新しい商品が続々と開発されています。
確かに、今はまだ、シェアが低い企業がゲリラ的に攻撃している段階ですが、大手企業もこうした攻撃を軽視していると、後で大きな痛手を被る可能性があります。
現在、日本生命等が大きなシェアをとっている最大の勝因は、保険レディの圧倒的なパワーです。しかし、もし、今後情報化が進むにつれてインターネット等での契約が一般的になれば、こうした強みは一気に無くなってしまいます。むしろ、保険レディを雇用することが「しがらみ」として大きな負担になるでしょう。
今後、どの業界でも、規制緩和は進行すると思われます。
こうした規制緩和の波にうまく乗れるか、それとも沈んでしまうのか。
まさに、経営者の先見性が問われる時代といえます。
リクルートは、社員の転職や独立を支援する新たな制度を導入する。
32歳以上の中堅社員が転職等を目的に退職する際に1,000万円の支援金を支給する。
また、退職後もリクルートの仕事を続けたい場合には、業務委託契約を結んで退職前の基本給を2年間保証する。
社内の活性化と能力向上が狙い。
<1997.8.12 日本経済新聞>
<ポイント>
一般的な早期退職者優遇制度と本制度の違いは、前者が社内のリストラを目的としたものであるのに対し、後者が社員の能力向上を目的としている点です。
コンサルタントとして、多くの会社の若い社員の方に会って話をすると、確かに、会社に慣れれば慣れるほど、外からの刺激が少なくなり、向上心が薄れる傾向にあるようです。
「会社から離れたときに、自分の実力がどの程度のものなのか」ということを常に自問自答することが能力開発には重要だと思います。
こうしたことから考えると、今回のリクルートの新制度は、優秀な人材の社外流出の懸念はあるものの、なかなか面白い取組みと評価できます。
NTTドコモは、自社の携帯電話同士の通話料を他社との通話料よりも安く設定した「自網内通話料制度」を導入した。
本制度は、ドコモの携帯電話から他事業者への携帯電話に電話した場合、3分間120円であるのに対し、ドコモ同士の通話の場合は110円と10円安くするもの。
<1997.10.8 日経産業新聞>
<ポイント>
PHSを含めた携帯電話市場は、まさに戦国時代を迎えておりますが、今回のNTTドコモの新制度は、現在の高シェアを武器にした典型的な「顧客囲い込み戦略」です。
現在、ドコモは携帯電話市場で約55%のシェアを保持しており、こうした強みを最大限に生かした、単純かつ明快な戦略といえます。
このようなドコモに対抗するためには、新電電系の携帯電話会社も、今後ますます提携関係を強めて行くことが必要となります。
巨大なガリバーに対して、その他の企業がどのように対抗してゆくのか、一般電話を含めた通信市場は非常に注目すべきケースです。
曙ブレーキは98年4月からの社内カンパニー制の導入を機に、有能な管理職の奪い合いとなった場合、より高い年収を提示した部門を選択できる「オークション制度」を導入する。
例えば、ある課長を情報カンパニーと乗用車カンパニーが同時に指名した場合、両カンパニ―のプレジデントは、年棒を提示し、高い方のカンパニーに所属する。
カンパニー間の競争を活発にするとともに、社内の人材の流動化を目的としている。
<1997.10.9 日経産業新聞>
<ポイント>
近年、カンパニー制を導入する企業は増加していますが、こうした思い切った人事制度をあわせて行う企業はまだ稀です。
プレジデントに経営者としての意識を植え付ける意味では面白い試みです。
また、一般的に事業部制やカンパニー制の弊害として、人材が固定化し、親分子分の関係が強まることが挙げられますが、こうした問題に対しても有効かもしれません。
但し、運用面を考えると非常に難しい問題が想定されます。例えば、各プレジデントは社内の他部門の人材の能力についてどのように把握するのか。求められた成果を上げることができずなかった場合減俸になるのか。なるとしたら、一体だれがその額を決定するのか等々。
さらには、人事部の存在意義自体を再考する必要性もでてくるでしょう。
いずれにしても、今後も結果をウォッチしてみたい取組みです。
製薬業界の医薬情報担当者(MR)の実質営業は、病院滞在時間の12%
10月に仙台で開かれた日本病院管理学会で発表された報告によると、東京、多摩地区の製薬会社8社、133人のMRの営業活動を調査したところ、1日にMRが病院に滞在する約10時間のうち、医師や薬剤士に面会するまでの待ち時間で約60%を浪費。また、面会時間の中でも多くは世間話に費やされており、医薬品情報の提供や収集といった本来の営業業務は滞在時間の12%程度に過ぎない。
<1997.11.20 日本経済新聞>
<ポイント>
以前、大手商社のコンサルティングをしている中で、営業マンの営業活動を調査したところ、移動時間を含めても営業活動に費やされている時間は約50%でした。
また、この会社の場合、事務職や間接部門の人員が営業マンと約同数いるために、全社員の労働時間の中での営業時間は25%程度にとどまっておりました。
こうした傾向は、特に珍しいことではなく、今、どの業界のどの会社でも、営業マン、あるいは全社としての、営業効率のアップを課題にしています。
解決の方策としては、「間接業務の見直しと削減」、「予定表等の行動管理の仕組の改訂による意識改革」、「効率的な営業マン配置」、「情報武装による業務効率化」等が考えられますが、なかなか解決しにくい課題です。
ライオンは卸からの在庫データを基に最適補給量を算出して、卸倉庫に商品を自動補給するシステムを開発、98年から実用化する。
卸の費用は無料で3ヵ月から半年かけて導入する。
ライオンは計画生産による在庫削減と配送トラックの効率的な運用が可能となり、また卸側も、発注業務の軽減と在庫削減の効果が期待できる。
<1997.12.24 日経産業新聞>
サンリオはインターネット上で取引先の小売店と受発注情報を交換する「エクストラネット」を稼動させる。
小売店はサンリオの在庫数量を確認しながらの直接発注が可能となり、また、サンリオも営業担当者が納期問い合わせ等の対応業務から開放されるために、販促キャンペーンやイベントの企画、店舗の模様替え等の小売店支援に注力できるようになる。
<1997.12.24 日経産業新聞>
<ポイント>
2つとも情報システムを活用した、顧客支援の記事です。
今から7、8年前、戦略情報システム(SIS)が流行しましたが、当時のシステムの中身は、社内の業務合理化が中心で、「戦略」とは名ばかりでした。
しかし、現在は、情報通信分野の技術進歩やインフラ整備により、本来の「戦略情報システム」構築の環境が整いつつあります。
社外に目を向け、情報システムを「顧客満足の向上」「顧客の囲い込み」「競合企業との差別化」等の手段として活用することは、今後ますます重要になるでしょう。