ソニーが技術者を5年間限定で採用

ソニーは情報処理分野の即戦力を確保するために、5年間限定で技術者を採用する。

職種はエンジニアリングスペシャリスト(設計開発研究社員)とR&Dプロフェッショナルの2つ。現段階で将来にわたり、技術者が継続的に必要となるか不透明なために期間限定とする。正社員への転換制度は設けないかわりに、給与・退職金は優遇する。

                        <1998.1.9 日経産業新聞>

 

<ポイント>

人材の流動化が進んでいる昨今、こうした傾向に対応する制度です。

短期間(1年契約等)の契約社員を採用する会社は最近増加していますが、今回のように5年という中期の契約を結ぶ企業は稀です。また、多くの会社は、契約社員から正社員への道を確保していますが、今回のソニーは、最初から「転換制度はなし」と明言している点も特筆されます。

 

 

富士通が業績連動型のボーナス制度を導入

富士通は、業界横並びの一時金決定方式を改訂し、業績連動型のボーナス制度を導入する。

企業業績の結果を自動的に賞与原資の基準とすることにより、社員の動機づけを図る。

99年3月期決算をもとに、99年の夏冬の賞与から適用する。

                        <1998.1.7 日本経済新聞>

 

<ポイント>

社員の動機づけは、最近、特に重要な経営課題となっています。そのひとつの対策として今回の富士通のような「業績連動型」のボーナス制度を採用する企業が増えています。

また、会社の利益が目標を上回った場合に、上回った分の一定割合を「決算賞与」として社員に還元する場合もあります。

私のクライアントの中にも、既に「決算賞与型」を導入している企業がありますが、特に「経費の使い方が慎重になった」という気がします。

これまでは、「会社の金だから使わないと損」という意識だったものが、「使わなければ自分に戻ってくる」という意識に徐々に変化しています。

 

 

ドレッサーが日本で機械の保守センターを全国展開

アメリカのガソリンスタンド用設備のトップメーカーであるドレッサーが日本市場で機械の保守センターを全国展開する。

98年度からのセルフサービスの解禁にいち早く対応することが狙い。米国では既に9割以上のガソリンスタンドがセルフ式であり、これまで蓄積したノウハウで一気にシェアの拡大を図る。

                       <1998.1.21 日本経済新聞>

 

<ポイント>

市場構造が変化すると、勝敗を分ける「カギ」も変化します。

今回のガソリンスタンドのセルフ化も、まさにこうした市場構造の大変化の典型です。

これまで、安穏としていた日本企業も、油断をしたら一気にその地位を奪われてしまうでしょう。

ガソリンスタンド業界は今後、非常に注目すべき業界です。

 

 

三菱重工が旧式工作機械の改造サービスを事業化

三菱重工業は、国内外の大型工作機械を最新鋭機に再生するサービスを事業化する。

製造業の間に急速に広まっている設備投資の抑制の動きへの対応が目的。ユーザーは同じ機能の新品購入に比べて、7割以下、場合によっては15分の1の投資で済む。

新規事業として位置づけ、新品の販売との両面作戦で工作機械事業の拡大を図る。

97年度は約120件、13.2億円の売上を見込む。

                        <1998.2.27 日経産業新聞>

 

<ポイント>

景況悪化にしたがって、こうした改造サービスや中古販売に対する注目度は急速に高まると思います。価格戦略の基本的な考え方は、「お客様の財布に合致した」製品を提供することですが、最近は「購入したいが、無い袖は振れない」というお客様が目立ってきています。

このようなお客様に対して、対応可能なオプションを持つことは、営業面で非常に武器になります。

また、三菱重工のように、他社製品まで改良の対象とすれば、他社の顧客の獲得は新品で獲得するよりも、かなり楽になるでしょう。そして、改良後、きちんとフォローをすれば、

次機種を自社製品とすることに自然とつながります。

こうしたことから考えると、新品営業との大きな相乗効果が期待できると思います。

 

 

ダイヤモンドコンピューターサービスが他社の新入社員を3年契約で借用

ダイヤモンドコンピューターサービス(DCS)は、同業のソフトハウス2社がSE向けに採用した新卒社員25名を派遣社員として受け入れる。自社の新入社員と同様に教育訓練し原則として3年後に出身会社に戻す。慢性的なSE不足が深刻化する中、DCSは手っ取り早い方法で人材を確保できる。また、出身会社も、新入社員を初年度から派遣要員として活用できるほか、負担となるSE教育もDCSに任せられるメリットがある。

                        <1998.2.19 日経産業新聞>

 

<ポイント>

人材確保・活用対策の新しい形態です。確かに派遣先、受入先の双方にメリットはあるのでしょう。しかし、今回の方法は、あまりにも「人を物として扱いしすぎている」という気がします。派遣される人はきっと、「何のためにこの会社に入社したのか」という疑問を抱くでしょう。どうも割り切れません。

 

 

NECが液晶モニターやノート型パソコンに再生可能な新素材を採用

NECは、今春発売するノート型パソコンの電池ケースとNECホームエレクトロニクス製の15インチ液晶モニターに「完全再生」できる樹脂を採用する。廃製品の回収・再利用を義務づける家電リサイクル法が将来パソコン等にも適用されることを想定した先手の措置。

素材自体はコスト高だが、再生コストは従来の樹脂に比べて2〜3割削減できるためリサイクルの義務付けの動きが広がれば全体コストは割安となる。

                        <1998.3.20 日経産業新聞>

 

ダイセル化学工業がエアバッグ発火装置の回収・再利用を研究

ダイセル化学工業は、エアバックの回収・再利用技術の研究を始める。2000年をメドにシステムを確立する予定。

                        <1998.3.20 日経産業新聞>

 

 

廃車リサイクルで自動車メーカー各社競う

廃車のリサイクル推進に向けた自動車メーカーの自主行動基準が出そろったが、2000年以降に新型車のリサイクル率を90%以上にすることで足並みが揃っている。

今後、こうした数値目標だけが一人歩きしないような企業努力が必要。各企業の具体的な取組みが注目される。

                        <1998.3.20 日経産業新聞>

 

<ポイント>

全てが同日の日経産業新聞の記事であり、最近のリサイクルに対する社会的な意識の高揚がうかがい知れます。

廃棄物の最終処分場の残余年数はあと7、8年であることを考えると、今後ますます規制が強化されることが予想されます。規制強化は企業に対して多額のコスト増をもたらしますので、NECのようにできる限り先手を打っておこうとする企業が増えています。

しかしながら、厳しい事業環境の中で、先手を打つことは実際には容易なことではなく、体力が無い企業にとっては辛い状況です。

このようなことから考えると、こうした環境問題に対する取組みは、これまで以上に企業間格差をもたらす引き金になると思われます。

 

 

新日鉄が相談役の終身制を廃止

新日鉄は会長、社長経験者の事実上の終身職となっている相談役に5年の任期を設定することを決めた。

                        <1998.3.20 日経産業新聞>

 

<ポイント>

事業環境が深刻になる中、産業界に相談役の見直しの機運が高まっています。相談役は元々その名の通り、経営陣に対し豊富な経験からアドバイスを行うべきポストですが、実際には「先輩に対しての厚遇」だけの目的で設けられている会社も少なくありません。

合理化途上にある全日空でも4月から相談役制度を撤廃することになっており、また三菱商事では就任3年目以降の相談役の役員会出席を見合わせています。

「先輩」よりも「現社員」という考え方を基本にすれば、当然の流れだと思います。

 

 

味の素ゼネラルフーズ(AGF)がペットフードから撤退

AGFは、赤字が続いていたペットフード事業を、ユニ・チャームの子会社であるユニ・タイセイに譲渡し、撤退する。AGFは72年から「ゲインズ」ブランドで事業を展開し、ドライタイプで強みを発揮していたが、最近は外資系各社の参入により苦戦が続いていた。  不採算部門を切り離し、主力の食品・飲料部門に経営資源を集中的に投入する。

                          <1998.6.2 日経産業新聞>

 

持田製薬が薬品の営業領域を得意2領域に絞り込み

持田製薬は、営業領域を循環器関連と救急医療の2つの領域に絞り込む。

この領域に関する情報提供をきめ細かく行うとともに、他社製品も導入して品揃えを増やす。

3年連続の薬価引き下げなどの影響で業績が低迷しているため、自社が強みを持つ領域に

経営資源を集中させ、市場の冷え込みに対応する。

                         <1998.5.27 日経産業新聞>

 

<ポイント>

2つの記事ともに、最近よく目にする「重点分野への経営資源の集中」に関する記事です。

従来のように、右肩上がりで経済が成長してきた時代は、拡大するパイ(市場)をみんなで仲良く分け合うことができました。バブルの頃に多くの企業が多角化を志向したことはこうした経済情勢を反映したものでした。

しかしながら、これからの時代はむしろパイは小さくなってゆきます。また、グローバル化が進展することにより、外国から大勢の猛者がやってきます。まさに「弱肉強食」の時代です。このような時代で生き残るためには、どんな小さなパイであっても、確実に分け前にありつけるパイを確保しておくことが必要です。

こうしたことから、今後もますます、重点分野への経営資源の集中は進むと思われます。

 

 

トヨタオート横浜が「ワンプライス制度」を導入した店舗を展開

トヨタオート横浜は、店頭表示価格からの値引きに応じない「ワンプライス制度」の店舗を展開する。営業は女性スタッフが中心で、20〜30歳代の女性や若者をターゲットにする。

                        <1998.5.29 日経産業新聞>

 

日新製鋼が特殊加工に一律料金表

日新製鋼はステンレス鋼の顧客に対して、特殊な加工を施す際の料金の一覧表の配布を始めた。ステンレス業界では、価格はメーカーと顧客が個別交渉するのが一般的であり、従来型の商慣行の見直しという点で注目される。

                        <1998.6.4 日経産業新聞>

 

<ポイント>

売手と買手の個別交渉は前近代的な商習慣です。交渉時の手間はもちろんのこと、駈け引き的な商売は、売手と買手の信頼の構築にマイナスです。当初の価格が大幅に値引かれたとき、買手は「得をした。」と思う反面、「きっともっと得をしている奴がいる。」という疑念を抱きます。こうした商習慣は、今後、強力な外国企業が参入する時の、格好の狙い所になるでしょう。「透明な料金体系の構築」は、生き残りのための重要な課題です。

 

 

いすゞが目標原価を公開

いすゞ自動車は部品メーカーに対し、事前に目標原価を公開した上で、発注先を選定する新たな購買手法を導入する。従来取引のない部品メーカーにも目標原価を告知することで低価格で高品質の部品の調達を増やす。

自動車メーカーにとって、部品やユニットの目標原価は「秘中の秘」であり、業界としてはじめての試み。

                          <1998.6.17 日経産業新聞>

 

<ポイント>

コンサルティングや研修を通して、いろいろな方と話をすると、「うちの業界は特殊だから」という声を良く聞きます。

取引形態、発注方法等、過去から現在までは、確かに特殊な面もあったと思います。但し、将来はどうなるのでしょうか。私見ですが、どんな業界もその特殊性は、今後、次第に無くなり、10年後には、普通の業界になっているのではないかと思います。

というのは、建設業界にしても自動車業界にしても、これまでの特殊性は、元をたどれば日本という国の特殊性に行き着きます。そして、今、まさに日本の特殊性が崩れつつあります。金融だけでなく、全ての業界が「ビッグバン」を迎えようとしているわけです。

「特殊だから」という考え方は非常に危険です。

普通の業界になった時の布石をできるだけ早急に打っておくことが懸命です。

 

 

スカイマークエアラインズが国内航空に「半額」で参入

スカイマークエアラインズが、9月から東京・福岡間で就航する。運行開始から来年3月末までの間の運賃は大手3社の半額。4月以降は40%安い価格に設定する。

 

                          <1998.7.24 日本経済新聞>

キリンの発泡酒「麒麟淡麗<生>」が絶好調

キリンビールが2月末に発売した発泡酒「麒麟淡麗<生>」が当初の販売目標を2倍に上方修正した。酒税の差を利用したビールよりも約33%安い価格で、「低価格ビール」を印象づけたマーケティングが奏効。

                          <1998.7.23 日経産業新聞>

 

<ポイント>

デフレ経済が進行する中で、製品価格の値下げに踏み切る会社が増えていますが、しっかり価格の弾力性(=いくら下げたら、どのように顧客が反応し、売上がどう変化するのか)を見極めて実行している企業は僅かです。

なかなか思った通りに売上拡大に結びつかず、結局、利益率だけが下がって、経営を悪化させている例がほとんどです。

顧客に目を向け、きちんと市場調査を実施した上での価格設定が求められます。

 

ちなみに、非常に強い競合企業(競合製品)が存在する業界に、新規で参入する場合、顧客には「30%の壁」があると言われています。すなわち、30%以上の価格差であれば、ブランドを気にせず、また、ある程度の機能差には目をつぶって、安価な製品を購入する傾向があるということです。

量販店のプライベートブランド製品等はまさに、この消費特性を狙って開発されています。

上記の2つの事例は、こうした消費特性に立脚したものであり、スカイマークも、今後、大手が追随しなければ、かなりの成功をおさめる可能性があると思われます。

 

 

日立物流が「年齢2分割」の人材配置で躍進

日立物流は成長分野であるサードパーティーロジスティクス(企業に対して物流改革を提案し、情報、保管、配送等、生産から販売まで一貫支援する事業)には、20〜30代の若手層を起用し、日立グループ向けの従来業務には40代のベテラン層を起用する、「年齢2分割」の人材配置を行っている。「斬新な提案力」という若手の強みと、「長年の経験・人脈」というベテランの 強みの双方を生かすことが狙い。

                                                  <1998・7・28 日経産業新聞>

 

 

サッポロビールが女性パートを活用した営業を強化

サッポロビールは店頭での鮮度調査などを担当してきた女性パート従業員を大幅に増員し、従来社員の営業マンが担当していた酒販店との商談なども受け持たせる。

一方で営業マンの役割を高度化し、スーパーやコンビニエンスストア等の本部商談に対する営業を強化する。

                                                  <1998・7・30 日経産業新聞>

 

<ポイント>

環境が厳しくなるに伴い、会社にとって最大の経営資源である人材をいかに活用するかが極めて重要な経営課題になっています。

「適材適所」という考え方は、古くからある言葉ですが、実際に企業の中で実現しようとすると、なかなか難しいものです。

その人にとって「本当に適している所」を見つけ出すのも難しいし、また、見つかったとしても、すでにポストが埋まってしまって配置できない場合があります。

上記の2つの事例は、個人単位の適材適所の限界を認識し、年齢や性別といった大きな単位での適材適所を考えたものです。

こうした取り組みは会社としては一定の成果は期待できるでしょう。

但し、一方で、役割を与えられた社員にとっては、その役割が全うできるか否かが会社にとっての、ほぼ唯一の評価基準となり、非常に厳しい環境になります。

 

 

日本石油の9リットル入りの灯油タンクがヒット

日本石油が95年10月に発売した9リットル入りの灯油容器が女性やお年寄りを中心に支持を広げている。

従来の18〜20リットル入り容器に比べ、小型で持ち運びが便利な点が受けている。

都市部では、女性や学生の一人暮らしが増えており、こうしたユーザーニーズをうまくとらえた商品と言える。

                                                  <1998・10・1 日経産業新聞>

 

日立製作所の単身女性向けの冷蔵庫「野菜小町」が好調な売れ行き

日立製作所が昨年の12月に発売した単身女性向けの冷蔵庫「野菜小町」が好調な売れ行きを維持している。

企画提案から、市場調査、デザインまで同社の独身女性チームが中心となって開発した「等身大」のマーケティング戦略が奏功した。

アンケートやスーパー等での定点調査により、1週間の買い物回数や平均自炊回数を割り出し、冷蔵室、野菜室、冷凍室を最適な容量にしたことが好評。

                                                  <1998・10・1 日経産業新聞>

 

女性を照準にしたミニコンポが続々と登場

ミニコンポ市場で、ガラス調素材等を使って「透明感」を演出した製品が続々と登場している。オーディオ製品はこれまで男性ユーザーを意識した黒やシルバーの機能重視型の製品がほとんどだったが、インテリア性を重視して可処分所得の高い若い女性ユーザーを取り込もうというのが各社の狙い。

                                                  <1998・9・17 日経産業新聞>

 

<ポイント>

いずれの記事も若い女性をターゲットにした商品についてのものです。

昔から、商売のねらい目は「女性と口」と言われておりますが、不況の中で、この基本に戻った商品が数多く出てきています。

確かに時々若い女性と話をすると、不況の実感に乏しいように思われます。

なかなかホームランを狙うことができないこの時期、市場が小さくても確実にヒットを稼ぐことは大切です。

 

 

裁量労働制の適用対象が拡大へ

働いた時間にかかわらず仕事の実績を評価する「裁量労働制」の適用対象を2000年4月から拡大することなどを柱とした労働基準法改正案が近く参院で可決・成立する見込み。

これまで、研究開発やデザイナー等の一部の職種に限られていた裁量労働制がほぼ全般の職種にまで広がる。

                                                  <1998・9・22 日経産業新聞>

 

<ポイント>

評価制度の実力主義化が進む中で、働いた時間の長さに関係なく、達成した成果で評価する裁量労働制は、今後、多くの会社で採用されると思われます。

連合や法曹界では、成果を出すために際限の無い長時間労働を迫られるケースが増えると警告しておりますが、こうした流れを止めることは難しいでしょう。

但し、こうした状況になればなるほど、会社としては一人一人の仕事の成果を公平に評価することが課題になることを認識しておくべきです。

 

 

モスフードサービスが「海老竜田」の発売を延期。エビ廃棄損が3億円に。

モスフードサービス(モスバーガー)は、1999年3月期にエビの廃棄損約3億円を特別損失として計上する。10月9日に予定していた「モスライスバーガー・海老竜田」の発売を急遽延期したため。

「海老竜田」はむきエビとエビのすり身を油で揚げ、雑穀を含む米で挟んだ商品で、「ぷりっぷり」とした歯ざわりを前面に打ち出していた。

試作品に満足していた清水社長は実際に売り出す製品に「この食感では『ぷり』だ。

新商品として世に出す訳にいかない」と不満を表明し、10月3日の取締役会で急遽発売延期を決めた。

                                                  <1998・10・16 日本経済新聞>

 

<ポイント>

 ほんのちょっとした記事ですが、私はモスフードの生き残りのための「強い意志」を

 感じました。

 右肩上がりで成長する社会では、特に優れた点がなくても全体的に見て合格点に達する

「それなり企業」でも市場の分け前にありつくことができました。

 しかし、淘汰が進む社会では、世の中で「必要」とされる明確なアイデンティティ(存在意義)が無ければ生き残れません。

ファーストフード業界は、今、安さを武器にしたマクドナルドの「独り勝ち」の様相を呈していますが、モスフードは「味にこだわる」ことで存在意義を打ち出そうとしているのでしょう。

今回の発売延期で今期の売上が前期比を下回る可能性も出てきた様ですが、「生き残り」という長い目で見たらきっとプラスになると思います。

企業としてのアイデンティティは製品やサービスで判断されがちですが、その根元は社員ひとりひとりの意識です。そして、こうした経営者の首尾一貫した姿勢が、社員の意識を統一することにつながります。

後日談ですが、10月27日の取締役会で、清水社長が社長を降り、会長になることが決まったそうです。

上述の記事のような言動は、社員に対する社長としての「最後のメッセージ」だったのでしょう。

 

 

本田が再生機能部品を直販。純正に比べ3〜5割安く

本田技研工業は、来年の初めにも、回収した機能部品を部品メーカーで再生して販売する事業に参入する。価格は新品の純正部品に比べて3〜5割程度安く設定する。

 消費者のコスト意識の高まりで、割安な部品の市場が拡大するとの判断から。

                                                  <1998・11・20 日経産業新聞>

 

<ポイント>

バブル経済後の消費者の購買行動の変化のひとつに、「メリハリのある購買」があります。

バブル経済時には、「何でもかんでも高くていいもの」を買いたがる傾向がありましたが、今は「金をかけるものと、かけないもの」をはっきり分けるようになっています。

例えば、旅行にしても、「部屋にはお金をかけなくても、食事は思いっきり贅沢をする」といった人が増えています。

こうした傾向は、将来、景気が回復しても続くと思います。

 

 

日産が国内最大の自動車展示場で「ワンプライス販売」方式を導入する

日産自動車は、99年末をメドに、座間工場跡地に開設する国内最大の自動車展示場で「ワンプライス販売」方式を導入する。

展示する新車百台と、中古車千台を対象に、最初から実売価格を明示し、値引きを一切しないことで消費者の価格に対する不信感を払拭する。

                                                  <1998・12・2 日経産業新聞>

 

<ポイント>

消費者の買い控えの一因に「価格への不信」があります。

供給者側は、なんとか売ろうと、値引きに走れば走るほど、消費者側は「もっと下がるのでは」と考えます。

また、当初の値段から大幅に下げて購入すると、消費者は、一瞬「得をした」気持ちになるのですが、次の瞬間「きっともっと安く買っている人がいる」と思います。

「駆け引き」を前提にした価格設定は、消費者の不信を買うだけの前近代的な商習慣です。

 そういう意味からして、今回の日産の取り組みは非常に評価でき、他社も必ず追随すると思われます。

      

 

ホテルオークラがISO9001の認証を取得。日本のホテルでは初。

ホテルオークラは、国際的な品質保証規格であるISO9001の認証を取得した。

施設、料理、サービスなどホテル運営にかかわる全部門の品質管理システムが対象。

日本のホテルがISO9001の認証を取得したのは初めて。

開業37年目を迎えたホテルオークラは、今後5年以内に創業時からのスタッフがほぼ全員退職する見通しだが、顧客サービスは個人の経験や能力に頼る部分が大きいために現行のサービス水準を維持・継承していくためにはマニュアルとして明文化することが必要と判断したため。

                                                  <1998・12・3 日経流通新聞>

 

<ポイント>

最近各社の動向を見ていると、他の業種・業界の経営手法を積極的に取り入れる企業が目立ちます。そして、こうした傾向は、特にリーディングカンパニーと呼ばれる先進的な企業ほど強いと思われます。

製造業の品質管理やコストダウンの手法。小売業・サービス業の接客やトラブル対応手法等、各業種、業界の中では一般的になっていることでも、他の業種・業界から見れば非常に新鮮で、参考になるものがあります。

そして、こうした経営手法の採用は、それまでの閉塞状態から脱却するための大きなヒントになるでしょう。

業種・業界の通例・慣習にとらわれない広い視野が重要です。